科学者とは

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科学者の歴史


遡れば古代ギリシャや古代ローマ等においても自然に関する探求(=自然哲学philosophia naturalis)は行われていた。だが当時の哲学の最重要課題と言えば、人間の生き方や集団のあり方に関する倫理的な思索であり、自然哲学はあくまでその哲学体系のごく一部という位置づけであり、自然哲学だけが単独で行われるということは少なかった。したがって自然哲学に携わる哲学者はどうしても脇役的な存在となり、社会的に重視されることはほとんどなかった。 16-17世紀、ヨーロッパで科学革命と呼ばれる近代科学成立の動きがあったことや、自然哲学研究のための学会やアカデミーが成立し、そこに集った人々が様々な活動をしたことで、初めて自然哲学者には、他の哲学者とは何かしら異なった役割があることが理解されるようになった。だが、その科学革命の後でも自然哲学者たちは自然哲学そのもので収入を得ていたわけではなく、他に生計の基盤があった。例えば、元々広大な領地を持つ貴族の生まれであったり、大商人であったり、聖職者等としての生活基盤を持っていたりしており、つまり現在で言うところのアマチュア・サイエンティストであり、彼らにとって自然哲学は知的好奇心を満たす趣味としての性質を持っていた。 19世紀に入ると、自然哲学ないし科学の高度化とともに、大学等の教育機関に科学の教育のための講座・コースが設けられ正規の教育体系として扱われるようになり、そのコースで指導教官の下、体系的に科学を習得した若者が生み出されるにようになった。また、研究所も設置されるようになり、彼らの働く場所が出現した。このようにして科学者は専門的職業のひとつとして確立し、それを表すかのようにヒューウェルによりサイエンティストという名称の使用が提唱されたのである。 現代の科学者のほとんどは、18世紀までのアマチュア・サイエンティストのように独りで趣味的に自然を探求しているのではなく、大学あるいは何らかの研究機関と雇用契約を結び、給料を支払われ、研究設備の使用を許可され、研究費を割り当てられている。

近年の科学者の共同体と競争原理


現代の科学者は、大きな科学共同体の中で生かされているような面がある。各人は専門化された学会に所属したり、学術誌等を講読することで他の科学者の研究により明らかになった新しい科学的知識を得ることができる。また、科学者は学会や学術誌で研究成果を発表することで、他の科学者からの評価を受ける必要がある。 それらの場で研究成果により高い評価を得た者は、次第に優秀な科学者と認知されるようになり、それに伴い高い地位、潤沢な研究費、助手、社会からの賞賛などが結果として与えられることが多い。だがその逆に研究成果を示すことができない者は低い評価が与えられ、研究費が削られ、社会的にも次第に不本意な状況に置かれることが多い。 研究成果の評価の基準のひとつとして、研究成果に新しい科学的発見が含まれているかどうか、という点がある。これを別の角度から見れば、同じ内容の研究をし同程度に努力していても、何かを先に発見した者、つまりpriorityプライオリティ(先取権)を確保した者が高く評価され、遅れて発見したとされる者はたとえ独自に発見したとしても大抵の場合評価されないという原理が働いていることも意味する。例えばノーベル賞などでも先取権を持つ者に賞と賞金が授与される。このような原理を背景として、先取権を巡って科学者(のグループ)同士で激しい争いとなることがある。 この競争原理は、一方で科学知識の進歩を促進してきたという効果が認められている。他方、科学者に対しては他者に先駆けて研究成果を出さなければならないという心理的な圧力を感じさせることで、科学者による様々な不正行為や病理的行動を生み出す原因ともなっている。


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